号泣王、岩合光昭になる!
事の始まりは5月の日本旅行。我が家の王子様は残念ながら一緒に旅行に行けないので、近所のペットシッターに預けました。とても親切な方で、耳の掃除からシャンプー、爪切りまで全てやってくれて、王子様も満足していたようです。でも、食事はやっぱり自宅のほうが良いと言っていました。オーガニック野菜に新鮮なお肉を使ったお母さんの手作りのご飯に日々舌鼓を打っている彼は、この期間は缶詰しか食べられず、知らない環境と慣れない食事で初めの数日は下痢をしてしまったそうです。ドッグフードをほとんどあげたことがなかった私たちは、大量に買い込んでしまい、食べきれなかった分を家に持って帰って来たのです。
そこで、主人が時々遊びに来ていた3匹の野良猫たちに残ったドッグフードをあげ始めました。もっと食べたい、どうして今日はご飯がないのとせがまれ、言われるがままキャットフードを購入し、毎日餌をあげるようになったのです。今まで猫を飼ったことがなかったので、猫の行動の全てが面白く、主人と二人で食事をしている猫の姿をずうっと眺めていました。食事が終わると身繕いをし、ヨガをする。とても優雅な動きにうっとりしてしまいます。ある朝、庭に常連猫のアキラがが5匹の子猫を連れて遊びに来ていました。近づくとすぐに逃げてしまうので窓越しに見ていると、本当に可愛らしく、芝生をぴょんぴょんと跳びはねながらお母さんの後を追っていく様子は、見ているこちら側も楽しい、明るい気持ちになります。我が家の庭に住むのかなと思っていたのですが、ただ見せに来ただけのようです。お母さん猫としてはここでは食事にありつけるぞと教えたかったのかもしれません。
しばらくすると、アキラの目の周りが腫れ、目には涙を浮かべるようになり、心配した私たちは、捕まえることができないので、写真を撮って王子様のかかりつけの獣医さんに診てもらいました。抗生物質を処方してもらい、5日間餌に混ぜてあげると随分とよくなって、私たちも胸をなでおろしました。安心していたのも束の間、ある日の夕方、アキラが先日の子猫のうち二匹を連れてきたのです。目を見るとアキラと同じようにしばしばさせていて、涙のせいでしょうか鼻水で息をするのが苦しそうにしていました。意を決した私たち夫婦は、子猫を捕獲し、ケージに入れ、翌日に獣医に連れて行きました。弥二さん喜多さんと名付けられた彼らは抗生物質とワクチン、それからノミダニ駆除の薬を塗ってもらい、直ぐに家に帰ってきました。すると、家でアキラたちが待っていました。ケージからだしてあげると、食事をし、さっさとお母さんたちと塒へ帰っていってしまいました。
実は子猫を捕獲した晩、一睡もすることができなかったのです。横ではぴったりと体を私に預け熟睡している王子様がいて、その一階下には、母親から離され、恐怖に震える子猫がいる。そして、この子猫たちを待ち構えている未来は決して明るいものではないのではないかという不安で胸が押しつぶされそうになりました。我が家に遊びに来る気高き野生児たち。隣人の家猫を見ているとどちらが幸せなのかと思うことがあります。一日中家の中で窓越しに外を見続ける一生。牧草地を軽やかに颯爽と駆け抜けるアキラ。体中から生命力が溢れ、夕陽に映し出される彼女は本当に輝いていました。15歳の老犬と改装中の家に暮らしている私たちにできることを今懸命に考えています。自由と誇りを奪わず、安全と健康を確保し、重くならない程度の愛情を彼らにそっと差し出してあげたいと思っています。
猫たるもの、人間から敬意を表されるのは、
当然至極なこと。
晴れて、願いが叶えば、
ついに猫の名前を、じきじきに呼べる日が、やって来る!
(『キャッツ』 T.S. エリオット)
一週間後、子猫がアキラたちと遊びに来てくれました。汚かった顔がこんなに綺麗になっていました。いつか「弥二さん」と呼べる日が来ることを祈って。
最後に、トワゾーンドールではこの度参加が決まった東京スピニングパーティーの売り上げの一部を動物愛護団体に寄付することにしました。ペットの殺処分数が極めて高い日本、「犬のアウシュビッツ」と言われているそうです。3000円の寄付で、年1回の狂犬病予防接種(一頭分)を受けさせてあげられます。救える命がすぐ傍にあることを忘れないでください。
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