母に寄せて
ふと料理をしている自分を見ると、それは全く母と同じ姿勢。姉からの手紙を読むと、その字は母のと見分けががつかない。私たち姉妹に確実に母の血が流れていることを感じる瞬間です。思春期の頃、母に「このくそばばあ~」と野次りながら雪を投げつけた私は、母の価値観から脱出したい一心でした。母の人生を全否定することで自分の新しい世界観、判断基準を手にしたいと思い続けていました。でも、子供の頃を振り返ってみると、母が私たちに与えてくれたものは今の生活の大切な一部分になっていることに気づきます。
毎年、春になると娘たちに花の種を一袋ずつわたしてくれました。わざわざ都会まで行って、珍しい花の種を買い、外国名の難しい花の名前と育て方を教えてくれました。母親を「くそばばあ~」と呼ぶほど心が擦れていなかった頃の私は素直に「ほうー、大輪インパチエンスね。どんな花が咲くのかな」と楽しみにしていました。植物を育てることの喜びを私たち姉妹は母を見て覚えたのだと思います。
東京在住といっても、最寄りの駅は単線。近所に大きな本屋もなく、小さい頃よく母と新宿の本屋のはしごをしました。まずは紀伊国屋に行き、帰りがけにサブナードにある福武書店に寄り、最後は新宿Pepeの中にある本屋へ。サブナードで一息つく場所は必ず決まっていて、人気がまばらないわゆる「喫茶店」という感じの店。なぜ母がここを選んでいたのかというと、そこには母の大好物のクリームソーダがあるからでした。子供心に「そんなもの飲んだら舌ベロが真緑になっちゃうよ」と思ったものです。母が勧めてくれた『トムは真夜中の庭で』や『秘密の花園』などは、私に田園生活への憧れを鮮烈に植え付けました。
家族から離れて寂しいと思うことは確かにあります。でも、日々の暮らしの中で母を感じることが多々あるので、それほど離れているという意識はありません。イライラしたときにつく深い、不快な溜息、「おい、これじゃママじゃん」と自分を嘆き、庭のバラが咲き始めると母の庭を思い出します。そしてふとしたときに子供の頃の記憶の断片が色としてよみがえってきます。母が飲んだクリームソーダの鮮やかな緑、真夏に咲くインパチエンスのオレンジ、一緒に作ったいちごジャムの赤、思い出の色を毛糸で再現できたら本当に素敵なことだと思います。
私は両親に「産んでくれてありがとう」とか「育ててくれてありがとう」と言うのはあまり好きではありません。心のどこかで、好きで産んだんでしょ?と思っているからでしょうか。ただ、いろいろな選択肢があるということを教えてくれて、その中から好きなものを探し出すきっかけを作ってくれたことに本当に感謝しています。そしてその好きなものが母との思い出の中にあることを嬉しく思っています。
みなさんもそんな思い出の色があると思います。その思い出の色で編んだ手編みの靴下をお母様にプレゼントしてみませんか?トワゾンドールでは5月13日の母の日に向けて、お客様からの注文を承っております。当店の商品、特に毛糸とシルクスカーフを中心としたカタログ(下記参照)を作成しました。このカタログのソックヤーンからお好きなお色をお選びください。
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