靴下100足編めるかな 08/100
デザイナー:Prairie Girl Designs
使用糸:Toison d'Or Lou
ゲージ:32目(メリアス編みで)
輪針サイズ: 2.5 mm
編み物をしていると、父に「セーター、買ってあげようか」と言われ、丁重にお断りしたことがあります。父のように編み物をしない人には本当に詰まらない単調な作業のように見えているのでしょう。今日は、一足の靴下を編み上げるのに、どのぐらいの情熱をつぎ込んでいるのかご紹介したいと思います。
羊の話からするとちょっと時間がかかるので、毛糸を染める段階から。春から秋にかけて、外は色で溢れています。窓から見える様々な色合いの緑、散歩の途中で見かけた雄キジの羽の色。目に入ってくる全ての色が生き生きとしています。もちろん、花の色も大切なインスピレーションの元です。我が家の塀に沿って、誰が植えたわけでもないのですが、こぼれ種なのでしょう、毎年沢山のケシが花を咲かせます。赤くて、花弁の中心に黒い大きな点があるポピーです。
このポピーを靴下にしてみようと思い立ち、早速染料をいろいろ混ぜ始めます。花びらの色だけでなく、黄色がかった蕾の色、咲き終わりのオレンジ色、黒い点、全てを取り入れたい!思いついたのが、冒頭の写真の毛糸です。このグラデーションの染め方は本当に大変で、肩が筋違いをおこし編み物すらできないこともありました。
次はこの毛糸にあった靴下のパターン選びです。アラン模様を組合わせた靴下でもいいのですが、この毛糸の良さはグラデーション、模様でじゃましてもいけないし、グラデーションで綺麗なアラン模様が見えなくなってしまってもいけない。なかなかチョイスが難しいのです。プレーンなメリアス編みの靴下やゴム編みの靴下でいいじゃないかと思われるかもしれません。でも、ニッターとしてはもう少し編み応えのある物を探してしまうのです。やっと見つけたのが、Zigzagular Socksという名のパターンです。なんと、デザイナーの方も、毛糸の柄を上手にいかしつつ編み物が楽しめるような靴下を作ってみたいと思ってこの靴下をデザインされたそうです。フムフム、洋の東西を問わず、世界のニッターは同じようなことを考えているのだなあと感じながら、編み物開始!(しかも、このパターンは無料でダウンロードできるのです。我々のように地獄に行っても毛糸を売ろうという守銭奴魂の持ち主ではないようです。)
やっと編み始めです。パターン通りに針を進めていくのもありですが、私はいつも何か一つ新しいことを学ぼうと思い、youtubeでいろいろ調べてから始めます。今回は作り目の作り方。日本の編み物の本を見ると、「指でかける作り目」「別鎖の作り目」「共鎖の作り目」が一般的で、その他の作り目はあまり目にしません。しかし海外のサイトを見ると実に多くの作り目の仕方があって驚かされます。今回の靴下は履き口から編むパターンなので、履き口の部分を作り目しなければなりません。履き口から編むと実際に靴下を履くとき、履き口の部分の伸びの悪さがいつも気になっていました。だからついついつま先から編んでいたのですが、今回、いろいろyoutubeで探した結果、伸縮性のある素晴らしい作り目の作り方を見つけたのです。その名はJeny's Stretchy Slipknot Cast-On。名前の通りジェニーさんという方が考えた作り目です。本当によく伸びてしかも、見た目も美しい。靴下だけでなく、帽子やミトンなどの作り目にも使えると思います。
左足が終わったからと言って気を抜いてはいけません。左足と同じようなグラデーションになるように毛糸を調節しながら右足を編んでいきます。片方をもう編んでいるので編むスピードも速くなっています。既に頭の中は次の毛糸のこと、パターンのこと、色のことでいっぱいです。こうして編み物の熱は途切れることなく続いていくのです。
もし、身近に編み物をしている人がいたら決して「セーターを買ってあげようか」とは言ってはいけません。こう耳元で囁いてください。「いい毛糸屋知ってるよ」と。そしてトワゾンドールのサイトのURLをそっと置いてきてください。その人はもしかしたら、ずうっと探し求めていた毛糸を見つけることができるかもしれません。