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Dutch Knitting Festival


by Janet Vermist

9月の東京スピニングパーティーのあと、10月のオランダ毛糸フェスティバル「Nederlandse Breidagen」に参加しました。今年は実際にお客様と接する機会を増やしたいと思っていたので、このオランダのイベントは東京スピニングパーティー同様、私たちにとって大きな挑戦となりました。編み物好きの、姉妹、親子、孫とおばあちゃん、そしてニット仲間が沢山集まったアットホームなイベントでした。会場には買った糸で早速編み物が始められるように、カフェに広いスペースがさかれていました。イベント最終時間までみなさん楽しそうに編み物をしていたのが印象的でした。

実はこのフェスティバル、去年も参加しようとエントリーまでしていたのですが、私が体調を崩し断念しなければならなくなったのです。そのときに、主催者の方からとても心のこもったメールをいただき、残念と悔しさで弱っていた私の心を本当に暖めてくれました。「今は治療に専念して!来年会いましょう」と言ってくれたその言葉を支えに、「絶対にオランダのフェスティバルに出るぞ」と頑張ってきました。そして、それが実現したのです!当日メールでやりとした女性と会うことができて、二人で抱き合って挨拶をしました。

このイベントに参加するためだけに、姉はシンガポールから、そして夫は有給休暇を使って一緒に来てくれました。これが、我が自慢の夫がデザインした私たちのブースです。立体感がでるように、3段の階段を作ってくれました。しかも、お客様が見やすいように、傾斜まで付けてくれているのです。

毛糸の邪魔にはならないけれど、オシャレ感を出してくれた大切な布です。当店オリジナルの輪針入れの製作など色々お世話になっている下北沢の「もめんやまきの」さんの布です。ブースを通りかかったお客様が、素敵な布ねと褒めてくださいました。

そして出来上がったブースがこちら。多くの方が写真を撮っていかれました!毛糸のことは何も分からない夫も、ご満悦の様子。姉妹でお揃いの手編みのセーターを着てお客様をお迎えしました。

初日の午前中は全くといってくらいお客様がいらっしゃらず、もうダメかもと思ったのですが、午後になると沢山のお客様が見に来て下さり、一日の目標額を超えることができました。どんなお客様が私たちの商品に興味を持って下さるのか、時間が経つにつれて分かるようになってきます。ああ、この人たちは冷やかしだなあとか、あと一押しで買ってくれるかもなど、お客様との対話で伝わってくるものがあります。オランダの方は、こちら側から説明を始めるよりも、まず自分の目で商品を見て、吟味して買い物をするのがお好きなようです。ですから、目をギラギラさせて、買ってくれ~という私の視線は熱すぎたかもしれません。姉に「今のお客様、きっと焼けちゃったよ~」と言われてしまいました。

そんな中、私たちの商品に興味があるのではなく、「日本」に興味があるお客様が沢山いることに驚きました。会話はこのように始まります。

女性:私、日本に行ったことがあるのよ。7回も。

姉:へえ~?

女性:北は北海道から南は九州まで。

姉:じゃあ、私よりも日本をよく知っていらっしゃるかもしれませんね。

私の心の声:ねえ、隣のお客さん、あなたの前の商品を見たがってるみたいだよ~

女性:日本アルプスは本当に素晴らしいわ~

私の心の声:そりゃそうだ。平らな国なんだから、オランダは。

女性:今私が凝っているのがね「Kimekomi」。知ってる?

ここから長い「きめこみパッチワーク」の説明が永遠と続きました。

私の心の声:「剃りこみ?」それはヤンキーだろう。お願いです。もう5分はお話していますよ~。あ~買ってくれそうなお客さんが消えてしまった~。

もちろん、ご購入されませんでした。ただただお話がしたいと思っているお客様もいるのです...。「おしゃべり厳禁」の札を貼ろうかと思ったほどです。でも、このようなお客様に会って、日本はヨーロッパにとってずいぶん近い国になったのだなあと感じました。大学生の頃ヨーロッパに行くと、日本という国がどこにあるかも知らない人が沢山いたものです。そして、もっと驚いたことは口を揃えて日本は素晴らしい国だと言ってくださること。このイベントでみなさんに温かく受け入れてもらえたのも、私たちの商品の品質を信じてくださるのも(もちろん、私たちは自信を持ってお客様に自分たちの商品を提供しているのですが)、「日本」という名前が持つ価値のおかげではないかと思いました。普段の生活の中で、「日本」を強く意識したことはありませんでしたが、このような場面で自分の国について改めて考えさせられました。

戦後のオランダ人の日本に対するイメージはそれほどいいものではなかったようです。大戦中の捕虜の問題、慰安婦問題などいまだに日本を快く思っていないオランダの方がいると聞きます。それでも、戦後70年以上の時間をかけ「日本」はオランダの方に好意的に受けいられ、そして身近な国だと思われるようになったのだと思います。それではトワゾンドールとして、ちょっと大げさですね、では、海外に住む日本人として、次の世代の日本人が日本から外へ出たときに、快く受け入れてもらえるようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?いろいろ考えていきたいと思います。

最後になりましたが、ここでも感動の再会がありました。姉のロンドン生活を忘れがたいほど明るく楽しいものにしてくれた、大切なお友達がオスロからわざわざ国境を超えて来てくれました。心に残る出来事が沢山あった2日間でした。みなさんに心から感謝を。

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