奈良のお宝
4月の下旬から5月の上旬にかけて、主人と日本へ一時帰国していました。5か月ぶりの家族との再会、ニットナイトの方々との出会い、濃密で充実した2週間でした。東京にずっと滞在していたわけではなく、両親が新婚旅行で行った奈良へ、主人と両親と行ってきました。奈良を訪れるのは4度目ですが、今回も興福寺の五重塔とその後ろに広がる自然の美しさに目を奪われてしまいました。法隆寺の悠久の時を経ても変わらないその佇まい、銀色に輝く瓦、百済観音の微笑みに古代のロマンを感じ、自分の存在そのものを考えさせられました。
車を借りての今回の旅行、奈良の中心部だけでなく、長谷寺や法隆寺そして唐招提寺など広範囲に動くことができて、両親も満足してくれていたようです。夕方からは疲れやすい両親をホテルに残し、主人と二人ならまちを散策。商店街をぶらぶらと歩いていると、主人のアンテナに触れたお店が。どこの町に行ってもちょっと変わったものを扱っている店に入るのが大好きな主人は、高級なアンティークを扱うお店ではなく、アンティークと言えるほど古くはないけれども、時代を感じさせるような品物を売っている店にフラフラと引き込まれてしまいます。
この旅行でも、やや古ぼけた感のあるお店の店頭に飾ってあった花瓶に恋をしてしまいました。「傷あり、2000円→1000円」となっていました。確かに花瓶の底の部分に小さな傷が。でも、水が漏れるほどの傷でもなく、花瓶を裏返しにしなければ見た目からは分からないほどです。主人のテンションがどんどんあがっていくのが感じられました。急いでポケットから千円札を出し、お店の中へ。
早速購入し、包んでもらっている間にお店の女性とお話しを。
女性:どちらの方?
主人:ベルギーです。
女性:日本にお住まいなの?
主人:いいえ、ベルギーに住んでいます。
女性:えっ?この花瓶、ベルギーまで持って帰るの?
主人:はい。(至極、真面目に答えております)
女性:ベルギーにはガラスの花瓶がないの?
主人:いいえあります。ヴァル・サン・ランベールという有名なガラス工房があります。
女性:???
わざわざベルギーまでこんな重くて大きな花瓶をなぜ持って帰るのか分からないお店の方の頭からはクエスチョンマークが複数飛び出ていました。そんなお店の方を後目にウキウキしながお店を後にした主人が、嬉しそうに、「ラッキーだったよね。こんなに綺麗な花瓶が1000円で買えるなんて、ベルギーだったらいくらフリーマーケットでも50ユーロ(5500円)はするよ。しかも、朝から売りに出されて午後まで買い手がつかなくて本当に運がいいよ。」とご満悦。そこへすかさず私が「この花瓶はあなたを何年も何年も多分お店の開店当初から待っていたのよ」と言うと「えっ?」と主人。まさに運命の出会いだったのです。
東京に帰り、自慢気に家族に奈良のお宝を見せると、みんなの頭からまたもやクエスチョンマークが。姉などは「これ、本当に持って帰るの?」と笑い出してしまいました。呆れ気味の家族に、いかにこの花瓶が素晴らしいかを力説する主人、花瓶を私たちの寝室に持ち帰って、「なんでみんな笑うんだろう」と花瓶に話しかけていました。
ベルギーに戻って早速庭の花を切り、自慢の花瓶に活け、その美しさに自分の判断に誤りはなかったと納得。上の写真がお宝の花瓶と我が家のライラック&ハナミズキです。旅行をするたびに、面白い物を購入する主人のおかげで我が家の居間には素敵な思い出がいっぱいです。一つ一つの物に小さなお話が詰まっています。このブログを書いている間中私の横に置かれたこの花瓶からはライラックの香りと無窮の都奈良の香りが漂っているのです。
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