姉、吉祥寺を走る!
先日、例によって姉と馬鹿げたメッセージのやり取りをしていました。姉曰く父はキャラが強いので死んでも話題を提供してくれる人らしい。そして、自分はキャラが薄いから死んだら忘れられてしまうかもしれないと心配していました。えっ!私は、彼女の心配に耳を疑ってしまいました。
一時帰国した際、運動をしすぎてふくらはぎにひどい筋肉痛を覚えていた姉と郵便局に行ったときのこと。車から降りるなり「ギャー」という悲鳴。どうしたのかと見てみると老婆のように腰を曲げ、足を引きずって歩いているではありませんか。車に戻って来るなり「私の、私の第二の心臓(ふくらはぎのことです)が破裂した!」と今にも泣きだしそうな様子。家に戻ると、家族全員の手を借り、ジーンズを脱ぎサロンパスを貼ってもらっていました。その間も「第二の心臓が、破裂した。肉離れで同窓会には行けない」と真剣な顔をして友人にメッセージを送っていました。3、4日すると、ケロッとしながら「あの肉離れはひどかったね」。
私:「えっ!肉離れってそんなに早く治るの?」
姉:「うん、そうみたい」
私:「それって、筋肉痛じゃない?」
姉:「違うよ。絶対に破裂したもん!」
今回はこんな薄いキャラの姉の大活躍のお話を一つ。
吉祥寺には羊毛を専門に扱っているアナンダというお店や、ファンシーヤーンで有名なavrilというお店もあり、帰国のたびに必ず行っています。アナンダでは羊さんの毛の匂いに囲まれながら糸紡ぎや機織りの講習を受け、avrilではこんな毛糸であんなものを編みたいと妄想しながら数時間居すわっています。このavrilのちょっと先にSheep Meadowという素敵な毛糸屋があるのですが、行くときはなぜかいつも編み物教室が開かれていて中に入ることができませんでした。
姉も吉祥にはよく行くようで、その日はSheep Meadowへ足を延ばしたそうです。ラッキーなことに編み物教室は開かれておらず、お店に入ることができました。お店の方が本当に親切で、とても話しやすかったそうですが、何を思ったのか、行動派の姉はお店の方に「これこれこういう者です。手染めの毛糸を販売しているのですが、一度私たちの毛糸を見てくださいませんか。」と売り込みをかけたのです。あとで分かったことですが、このSheep Meadowさん、手染めの毛糸を中心に販売されているお店で、ちょうど新しい毛糸を探されていたそうなのです。まさに渡りに船とはこのことをいうのでしょうね。話はあれよあれよと進み、私の一時帰国に合わせて、毛糸を見せに行くことになりました。私はトランク一杯に毛糸を詰め込み、主人は税関で毛糸について質問されたときの受け答えをシミレーションし、行商のおばさんよろしく日本に帰国しました。
約束の日。今まで染めた毛糸を持って伺いました。緊張して手が震えてしまいましたが、「染ムラがいいですね」とか「いい色ですね」と気に入ってくださり、お店に毛糸を置いて頂けることになりました。この記事の写真がその毛糸のサンプルです。夏中にサンプルをお見せして、冬に向けて納品することが決まりました。小さなキッチンでもっと大勢の方に毛糸を見てもらいたいなあと思いながら染物をしていた私の夢が、姉の勇気ある一歩のおかげで叶えられつつあります。内弁慶の私には絶対にできないことを第二の心臓を破裂させつつも軽々とやってしまう姉にシャポーです。これからも続くであろう姉の武勇伝に期待してやみません。
毛糸のオーダー、承っております。お気軽にお問い合わせください。
Sheep Meadow
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-27-8
吉祥寺にお店を開かれて30年以上になるそうです。編み物教室も長いこと続けられており、20年以上も通われている生徒さんもいらっしゃるとか。お店の方は本当にハイセンスで、いつもご自分で編まれたニットを着ていらっしゃっていて、それがまたとてもよく似合っているのです。この人が先生なら絶対に自分に合った物を作れると思わせるお洒落な雰囲気の方です。編み物を始めてみたい方にお勧めの編み物教室です。